人現会について

会長挨拶 (令和5年9月)

江戸時代の中頃、良寛さんが、二十歳を過ぎ(安永 8 年;1779)、 現在の岡山県倉敷市の 備中玉島にある曹洞宗円通寺の国仙和尚を訪ねたときに、道元禅師を讃えて「身心脱落 ひ とり一実 千態万状 龍玉を奔す 出格の機は太白を過ぎ 老大の風は乾竺に像る」と太 田光一著『良寛和尚』鳥影社、2000 年、47 頁)の中で紹介しています。「一実」とは、「唯 一真実の理」のことで、仏道の原点「只管打坐」を称え、「千態万状 龍玉を奔す」とは道 元禅師の縦横無尽の説法、「乾竺」は押韻上の倒置「竺乾(じくけん)」で仏陀のこと、と 解説しています。
道元禅師の『正法眼蔵』第一「現成公按」の中に「身心に法いまだ参飽せざるには、法 すでにたれりとおぼゆ。法もし身心に充足すれば、ひとかたはたらずとおぼゆるなり」の 体験を 200 年以上前に良寛和尚もしたようです。ニュー・カウンセリングの中のセンサリ ー・アウェアネスの体験も、毎回、何度も体験を通して判ったつもりになりになった、そ の瞬間、私自身が自分の誤りに気づく連続です。「人間の根本の学習」とは何か?そんなこ とを考えている時、2023 年 8 月 22 日、彼女の没後 20 年を記念して SAF のステファンさ んが、YouTube にアップしました。そのタイトルは「人間の学習、気づき」について、シ ャーロットが 100 歳の時(亡くなる 3 年前)にカリフォルニア州のサンタバーバラで行っ たワークショップの場面を 10 分ほどの映像にまとめたものです。その映像の中でシャー ロットは、「“人間が学ぶ“、ということに、どんな意味があるのでしょうか。目的を持って 行動していることに何の疑問を持つことなく、普段から自分のからだを動かしていることに何の疑問も持たずに、無意識に習慣化したからだのパターンのなかでしか、からだが動 いていませんか?わたし自身にいま訪れている瞬間の気づき、その気づきの瞬間こそが人 間の学びであるということに気づいていますか?“私たちの生活が、すでに習慣化した流れ の中にあること”、と、“人間が(気づきを通して)学ぶ”ということは、全く異なることで す。しかし、“人間の根本の学び”は、この世界で、生きることの可能性、一瞬、一瞬が、 自分自身が、生まれ変わる瞬間(チャンス)であること、それが“人間の真の学び”である こと。それは、決して楽なことではありません。自分が、いま何かをしている時に、自分 自身が、全身全霊で学んでいる(感じている)ことです。わたしが生きて、いまここの居 ること、いまここで感じている(経験している)こと、そのことが大事なのです。それは、 同じように自分の身のまわりの世界、他者と一緒に生きていることです。だから、それに 気づくことは、ただそれだけで素晴らしいのです。自分自身が、自分や身の回りの世界、 他者や大自然(環境)の無為自然に気づいていること。そのことが、“人間の学びの根本” なのです。」
令和 5(2023)年 7 月 23 日に、人現会創立 50 周年記念総会は、100 年以上前に、夏目 漱石が歩いた神楽坂にある東京理科大学で行いました。総会終了後、神楽坂通りを上がり、 早稲田通りに出て、新宿区が漱石の旧居を再現した『漱石山房記念館』へ、参加者のみさ んと一緒に散策に出かけました。途中で縁結びの「赤城神社」や老舗の和菓子屋で休憩を 取りながら 40 分ほどの散策を楽しみました。蝉しぐれ、夏の陽ざしの中、江戸情緒の雰囲 気がまだ少しだけ残る神楽坂を楽しみました。

人現会会長 伊藤稔








人現会の経歴

元横浜国立大学教授、伊東博は、昭和41年から49年まで「日本カウンセリング協会」理事長を務めていました。当時そこでは、『援助する教育』(伊東博著)をテキストとする講座が開かれていました。その講座に参加していた7人の主婦は、日本の教育を人間化する方向に変革しなければ日本の将来は大変なことになってしまうだろうと明察し、そこから、人現会(Japan Assocation for Humanisitic Education :JAHE)は昭和48年(1973)に創立されました。

創立以来30年近くを経ましたが、日本の状況は、教育ばかりでなく、社会も制度も、経済もまさに危機に瀕しているように思われます。いま「日本は没落する」と警告する人が増えてきましたが、少年たちの殺人事件、高級官僚の収賄・接待問題、銀行が抱え込む不良債権等々、これらの問題は、すべて解決の見込みが薄く、私達を不安の淵に陥れます。

こうした徴候の原因の根幹は、長い間、日本の教育が人間中心の教育をおろそかにしすぎてきたことにあるのではないでしょうか。これからどうしたらよいのでしょうか。無力感、絶望感の極みの中で、私どもの活動が一筋の明光となることを望んでいます。

人間中心の教育は、これまでの知識偏重の教育や管理主義に対して、単なる授業の改革だけでなく、教育目標、教育方法、教育課程、教師・生徒関係、教育行政など教育のすべての面にわたっての提案を含んでいます。  特に、「人間中心の教育」の教育課程として考えられた「ニュー・カウンセリング」を提唱し、それを中心に毎年約10回のワークショップを企画しています。ニュー・カウンセリングは、単なる伝統的なカウンセリングとは異なり、その目標は問題解決ではなくアウェアネスにあります。そして、その内容は「センサリー・アウェアネス」「アレクサンダー・テクニーク」、東洋思想を取り入れ、「坐る・立つ・ねる・歩く」、「与えること・受け取ること」、「表現と理解・鑑賞」という要素を含む実習からなるものです。ニュー・カウンセリングの哲学の根底にあるのは「身心一如」であり、アウェアネスです。いいかえると、ニュー・カウンセリングはアウェアネスの起こりやすい場を準備・提供する体験学習なのです。

いま「人現会」は、このような歴史をたどりながら、その現実化のために、「ニュー・カウンセリング・ワークショップ」や「教育人間化のためのワークショップ」、「自然の中の生活学習会」などをはじめ、いくつかの「ワークショップ」の場を提供することをその仕事と考えております。





人間中心の教育を現実化する会役員および

アメリカから人現会のホームページ作成でサポートしているサイトチームの紹介です。


           [役員]
           伊藤稔………………………………………………会長
           高橋和子……………………………………………副会長
           富塚精一……………………………………………研修担当
           藤田美智子…………………………………………会計担当
           ジョンソン(別所)夢路…………………………庶務担当
           大月裕子
           山中秀生

           [サイトチーム]
           家田智子
           柴田有李
           柴田翔平



集合写真下段左から 藤田、高橋、伊藤、ジョンソン、富塚

上段中央が山中、その右側が大月



個別写真左から 家田智子、柴田有李、柴田翔平




創立
昭和48年6月1973年
正式の名称
人間中心の教育を現実化する会
英文名称
Japan Association for Humanistic Education (JAHE)
目的
「人間の研究」と「人間中心の教育」を日本国内及び地球上に現実化していくこと
活動
現在は主にオンラインで、勉強会や研修会を開催